-トマス・モア-

誰かに喜びを与えることにより、あなたは多くのものを得ることができるのです。

-ノノイ神父-

 この言葉は、カトリック教会で人気のある聖人の一人である聖トマス・モアが言った言葉です。わずか57年という比較的短い生涯でしたが、トマス・モアは確かに人生で多くのことを成し遂げました。

 弁護士、裁判官、哲学者、作家、政治家、或いは著名な人文主義者でもあったと言われています。トマス・モアは、当時イギリス政府で最高位であると言われていたイギリスの大法官に任命され、ヘンリー8世に仕えました。

 しかし、これらすべての権力の「罠」は、トマス・モアの神への深い信仰を損なうものではなかったようです。おそらく、冒頭の言葉は、世俗的な見返りを求めることなく、神に仕えたいというトマス・モアの強い思いから出たのでしょう。この言葉は、まさにイエスご自身が言われたことと本質は同じです。聖書マタイ6章33節に「まず、父の国と神のみ旨を行なう生活を求めなさい。そうすれば、これらのものも皆、加えて、あなたがたに与えられるであろう」と記されています。

 神のみ旨を行なう過程で、見返りを求めることなく自分自身を無にすることによって、私たちが出会い、暮らしや仕事をともにする人々を幸せにできることに気づくでしょう。そして、古い自分の殻を脱ぎ捨て、他に尽くすことにより自分を本当の意味で成長させ、心を豊かにすることができるのです。フランシスコ会の創設者であるアッシジの聖フランシスコも言うように、与えられるよりも与えることの方が喜びは大きいのです。

 トマス・モアはカトリック教会に対するヘンリー8世の邪悪な計画に反対し、人生を終えることになりました。トマス・モアは英国国教会の最高責任者に聖職者ではない王が就任することを拒否し、そのことが理由で処刑されたのでした。

 処刑の際、トマス・モアは次のように言ったと伝えられています。「私は王の善良な僕として尽くしてきた。しかし、王の望みと神の教えが相容れない時は神の教えを優先する」と。トマス・モアは神にすべてを捧げました。そしてその恵みとして、神は天国での終わりのない喜びでトマス・モアに報いてくださったのです。